2005年12月09日

地下放送局、秘密局 〜短波放送の政治的利用〜


タイトルが漢字だらけになってしまったが、「地下放送局」「秘密局」という言葉には、ドキドキさせる魅力がある。

pic_radioinsurgente.jpgこちらは叛乱ラジオ。メキシコ南東部の山中より放送中。叛乱ラジオの最初の銀河系放送に、ようこそ。EZLNの声、叛乱ラジオは、短波の49m周波数帯、5.8メガヘルツで放送。最高政府が妨害電波を流した場合、海賊版CDにて中継……「2003年8月9日に流されたマルコス叛乱副司令官による叛乱ラジオの紹介の一節」冒頭。メキシコ先住民運動連帯関西グループのサイトから)

「月刊短波」の情報を見ると、世界にはVOBI(ビアフラ共和国亡命政府の地下放送。昨日の記事参照)のような“秘密局”が他にも多数存在するようだ。

主に政治的な目的を持って制作された秘密局の番組は、その多くが(VOBIと同じように)第三国の送信所から送信され、そして時にはジャミング(妨害電波)をかけられる。

また一方では、合法的な放送局や送信所も、国境を越えて長い距離を飛ぶ短波の特性を活用し、政治的な宣伝などにしばしば利用されている。

前記事でリンクした2003年4月の情報の中では、
「情報が制限されている北朝鮮に、ペンタゴンが小型使い捨てラジオを大量散布する計画を立てている。その作戦をバックアップするために、アメリカの国営海外向け放送(VOA)が北朝鮮方面向けの放送時間、送信周波数を倍増させた。韓国と米国の人権団体が気球を使って大量のラジオを北朝鮮に飛ばす計画を立てているが、この作戦と同調するものかは不明」

「イラク北部にある放送局の送信機を使った秘密局が出現。イラクの兵士に対する油田を破壊するなとの呼びかけ、 政府軍への反乱のよびかけ、連合国がイラク人民を救いに来るというような内容。これは明らかに米国CIAの運営で、北部イラクでクルド人に軍事訓練を行っている米国特殊部隊のAチームが関与していると言われる。また、VOAはイラク戦争に伴ってクルド語放送を1日1時間から4時間に増強」
などが目立つ。

ちなみにイラクに対する英米の武力行使が始まった際には、NHKの海外向け放送Radio Japanが、中東・北アフリカ向け24時間日本語放送、中東・北アフリカ向アラビア語・フランス語放送の追加などの特別放送を実施したとのこと。これは政治的意図ではなく、主に現地邦人への情報提供が目的だろう。

その他、秘密局関連の小ネタを拾っていくと、
・ノルウェイ中継の秘密局スケジュール(西欧、中東、東アフリカ向け。ペルシャ語、アラビア語、クルド語など)。
・スーダン反政府放送再開。
・イラクでイギリス軍がバスラの放送局を占領後、いくつかの秘密局の放送が停止。
・ウズベキスタンから送信されていたラオスの秘密局が、台湾からも試験放送を開始。
・マイアミの放送局がキューバ向け秘密放送を送信。
・イランの反政府女性グループが秘密放送開始。VOAのペルシャ語放送と同じ送信所を使い、放送時間が連続しているため、引き続いての聴取が可能。
・ロシア送信と推測されるカメルーン向け秘密局が出現。これに伴い、同局を運営する団体の議長が逮捕拘束されたが、放送は継続。
・マダガスカル送信のジンバブエ向け秘密局が周波数を変更したが、すでにジャミングをかけられている。
・オサマ・ビン・ラディンを捕まえた者には賞金を出すとダリ語、パシュト語、ウルドー語で放送する、米国心理部隊によるInformation Radioがスケジュールを変更。
など。

もちろんわが国近辺でも、そこでの情勢を反映するかのように怪しい電波が飛び交っている。

韓国語で連続する数字を朗読するだけの、スパイに指示を出していたとされる有名な乱数放送

また、“親北朝鮮の韓国民族民主戦線がソウルから発信している反政府地下放送”というふれこみの「救国の声」は、実際には平壌送信の北朝鮮による謀略放送だった。逆に“北朝鮮の反体制組織の支援を得て平壌から放送している”名目の「人民の声」は、韓国が行っている北朝鮮向け地下局。

脱北者によるインターネット放送局「自由北韓放送」は今年、第三国から北朝鮮に向けた短波放送を開始した(→自由北韓放送関連の朝鮮日報記事。この中に短波放送開始についての記事はない。が、この放送局が脱北者経由で様々な北朝鮮アイテムを公にしているという“もうひとつの役割”や、自国井である韓国内の組織との衝突・韓国政府からの圧力?との闘いが書かれている)。

ごく最近の話題としては、12月にソウルで開催される北韓人権国際会議にあわせ、米国の団体による「開かれた北韓放送」が放送を開始したことが報じられている(→「月刊短波」2005年12月号)。

世界には、これだけアンオフィシャルな電波が、様々な意図や情報を乗せて飛び交っているのだ。


BGM: Guerrilla Radio by Rage Against Against The Machine
 (→see also here



※写真は下記ClandestineRadio.comAbout Usから拝借。"Guerilla announcer on Mexico's Radio Insurgente, circa 2004"。→see also:「インターネットが伝える「地の民」のことばと歌声」 by 山中速人(社会学博士:関西学院大学)



VOTibet.jpg
Voice of Tibet
チベット独立派による地下放送局。ノルウェーからの支援を受け、ロシアやウズベキスタン、セイシェル等から送信とのこと。中国向けの放送は、中国からの激しいジャミングを受けているようだが、放送はネットで聞くこともできる(チベット語、中国語)。



[参考サイト]
アジア放送研究会
→地下放送、乱数放送などの情報や、それらの音声ファイルも。その他、東アジア諸国の「放送」に関する濃ゆい情報&読み物が満載。
地下放送局
→地下放送局へのリンク集。多くの非合法放送局はウェブサイトを立ち上げ、放送内容をストリーミングしている。野次馬的アジア研究中心「アジアメディアリンク」より。
JO2OXL's Ham Radio and BCL Home Page
→アマチュア無線家のサイト。「救国の声」「人民の声」などの地下放送、乱数放送の情報も。
ClandestineRadio.com
→「clandestine:[形]秘密[内密]で行われる. ▼不法行為を行うためにとの含みがある」Yahoo! JAPAN辞書より。世界の秘密局に関する情報サイト。
CLANDESTINE & EXTRATERRITORIAL BROADCASTERS
→世界の秘密局の放送をちょびっとだけ音声ファイルで収集。Radio Abeokuta
、Radio Insurgenteなどもばっちりカバー。INTERVAL SIGNALS ONLINEから。

《おまけ》旅するTシャツ雑貨屋アジアン・ラティーノ


posted by 犬TV at 03:56 | Comment(0) | TrackBack(2) | 放送 - 総合
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

韓国語講座を受講して印象深かったこと
Excerpt: 韓国語講座の印象深かったことです。 韓国語を習った経験や韓国人の友人との交友を書いてます。
Weblog: 簡単ハングル!韓国語
Tracked: 2005-12-09 11:03

スーダン
Excerpt: スーダンスーダン共和国(スーダンきょうわこく)、通称スーダンは、北アフリカに位置するアフリカ大陸最大の面積をもつ国。首都はハルツーム。エジプト、リビア、チャド、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、ウガンダ..
Weblog: 世界の旅
Tracked: 2005-12-12 09:44
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。