2005年12月09日

「しおかぜ」にみる“主張”のアウトタスキング

特定失踪者問題調査会は、北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」を10月30日から毎日放送している。北朝鮮内にいる拉致被害者に、日本で救出の努力をしていることを伝えるのが目的だ。

 →しおかぜ通信 by 戦略情報研究所

 調査会による記者会見内容 from アジア放送研究会
 →2005/10/26(放送開始にあたって)
 →2005/11/25(放送1ヶ月にあたり)

拉致被害者家族やその支援団体の最終的な目標は、「被害者の帰国」に違いない。そのための活動として、マスメディア、講演会、街頭アピール、出版、インターネットなどを通じ、その主張を世論に訴えている。また、日本政府への要求や、北朝鮮への抗議、関係各国への働きかけなども行っている。それぞれの方向に向けて、様々なチャンネルを使って主張をしているものの、もっとも切実で困難なのが「被害者本人との連絡」だ。

当然である。北朝鮮は「生存している被害者はすべて日本に帰った」と言い張っている。存在しないことにされてしまっている人間と連絡を取ろうとするのだから、簡単ではない。

それでも、自由を奪われながら暮らしているであろう被害者に向け、何とか語り掛けたいとの思いがこの放送を実現させたのだろう。しおかぜに乗ってメッセージが伝われば、との思いからこの番組名が名づけられたという。

韓国内では、脱北者によるインターネット放送局「自由北韓放送」が、北朝鮮に向けた短波放送を始めた。「しおかぜ」の設立は、この自由北韓放送の活動がきっかけとなったようだ。

例えば、被害者ひとりの実弟増元照明氏がCSのチャンネルで番組を持つなど、被害者家族が直接主張するためのメディアを持ち始めている。しかしそれらはあくまでも国内世論に向けたものだった。
※まあそのCSチャンネルは、社長自らがキャスターとして登場し、靖国や南京の問題について突っ走った発言をかますことで週刊誌に取り上げられるような、ちょっと個性的なところではあるのだが。

北朝鮮にいる被害者に語りかけることを目的とした短波放送を始めるにあたって、電波の送信はイギリスのVT Communicationsに委託され、非公開の第三国にある送信所が使われることになった(VT社は世界の放送の10数パーセントの配信を取り扱っており、NHKの国際放送も請け負っている)。

送信費用だけで年間約300万円がかかるという。ただし番組は事務所でパソコンを使って録音され、インターネット経由で英国VT社にアップロード、そこから送信施設に転送されるため、制作に関しての費用はそれほどかかってないようだ。資金は一般のカンパや家族会の支援で賄い、最低1年は続けられる。

よく知られているように、北朝鮮では市民の行動が厳しく制限されている。海外からの情報が入る短波ラジオはご法度で、外国の放送を聞いたために処刑された人もいるという。たとえ一般市民がラジオを所有していたとしても、ダイヤルが平壌放送に固定されているそうだ。

このような状況下、さらに当局に監視されているだろう拉致被害者が「しおかぜ」を聞く可能性はとても低いといわざるを得ない。心配された妨害電波も、今のところはないようだが、妨害するまでもないということなのかもしれない。しかし何らかの形で、この放送が北朝鮮の誰かの耳に届き、うわさになって広まればと期待され、韓国語での番組制作も検討されている。

RFA(Radio Free Asia)が2001年に極秘に行った調査によると、北朝鮮のエリート層で同局の放送を受信しているのが確認されたのはわずか12人だったという(→月刊短波 2003/04)。※RFAは、アメリカ政府による政治的目的を持った国際放送で、96年設立。アジア各地に資本主義と民主主義の考え方を啓蒙する事を目的としている。

[参考サイト]
近隣諸国放送情報板 from アジア放送研究会
日本人拉致問題 from ウィキペデイア


posted by 犬TV at 23:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 放送 - アジア
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