2006年03月09日

ミャンマーのオルナタティブ・メディア

Democratic Voice of Burma: Major News Source for Burma

dvb.jpg「ビルマ民主主義の声(DVB)」はミャンマーの反政府放送で、ノルウェーを拠点に短波放送を行っている(母体となる亡命政府「ビルマ連邦国民連合政府」の本拠地はアメリカ・メリーランド州のロックヴィル)。上記サイトからは、ビルマ語による最新の番組内容を各種音声フォーマットで聞くことができる。時間は約1時間。その他、サイトに掲載されるニュースのテキストは主要な少数民族語でも書かれ、ムービーでの情報も豊富だ。

独裁的な軍事政権下、公式なメディアから出る情報が選別されている一方で、反体制メディアDVBの発信する情報は信頼度が高い(→※1)。軍事政権側の人々も、情報の正確さからこの放送を情報源としているといわれ、そのためか政府による妨害電波が最近停止したことが確認されている(→※2)。

政府管轄の地元メディアではMRTV-3がサイトを開設していて、ストリーミングも行っている。MRTV-3は衛星放送もやっているらしく、政府広報&ニュースみたいな英語のムービーをちょっと見たが、ラジオのライブは聞こえなかった。夜中だから?

国境なき記者団による“World Press Freedom Index”の2005年版で、ミャンマー(ビルマ)はワースト5にランクされている(→※3)。マスメディアどころか私信や電話までもがチェックされているという話もあり、ミャンマー政府による情報の管理は厳しいようだ。インターネットの普及も近隣国と比べて進んでおらず、アクセス制限がかかっている(→※4)。

抑圧された情報環境の中で、Democratic Voice of Burmaの誕生は必然的だったように思える(→※5)。BBCやVOA、RFAといった海外メディアも短波でのビルマ語放送を行っているが、DVBが「当事者による外からの放送」であることは重要だ。それは初め、管理外情報を流入させる非公式メディアとしてジャミングにさらされていた。しかし結果的にもっともアテになる情報源だということが知れ渡ると、政府は妨害電波を止めてしまったのだ。

自前メディアの統制や情報インフラ整備の遅れの反動だろうか、ミャンマー市民の情報を求める欲望は、衛星テレビの普及を加速させた(→※6)。需要が大きいこともあって、その環境は意外と安くに手に入る。検閲されていないBBCやCNNの受信には規制もないようだ。国際交流基金による「日本語教育国別情報」国別一覧《ミャンマー》(2004年度版)を見ると、ミャンマーでは公的な外国語教育が積極的に行われているとはいえない。しかし衛星放送の普及からすると、英語理解力は案外高いのではないだろうか(1948年まで英連邦だったことも関連しているかもしれない)。

ミャンマーの家庭に備わったチューナーを狙って、DVBは衛星テレビ放送を始める(→※7)。メディア環境が良いとはいえないミャンマーだが、北朝鮮のような完全シャットアウト状態とは状況が違う。検閲の逆にあるジャミングの停止や衛星放送の普及は、自己矛盾や独特のスキを感じさせる。このような出来事が少しずつ積み重ねられた末に堤防が決壊することがあれば、インターネットももの凄い勢いで普及していくのだろう。

dvb_animated.gif


[追加情報]

※1:ミャンマーのマスメディア状況はBBCのCountry profile: Burmaにまとめられている。また、財団法人PHD協会のサイトにあった「2003年ビルマツアー」報告で、マスメディアについて簡単に触れられている。在ミャンマーの木村健一氏によるコラム「報道とミャンマー」は、ヤンゴンに8年暮らしているひとりの日本人の視点。「日本や世界の報道だけでは全くこの国の事が分からないと思います」は、まさにその通りだと思う。

※2:ネタ元→「月刊短波」2006年3月号の記事より。DVBの中継局のひとつRadio Netherlandsによる“Media Network Weblog”02/19分エントリは、“Democratic Voice of Burma says it's no longer jammed”と題して、DVBのディレクターAye Chan Naing氏の発言などを報じている。

※3:「国境なき記者団」のビルマ情報

※4:ミャンマーのネット環境については、「ミャンマーにおけるIT事情」(林隆男氏。PDF形式。中堅・中小企業支援サイトRising-e.comより)、「世界のインターネットの繋ぎ方〜東南アジア編 <その2>」(山谷剛史氏 INTERNET Watch 2002/11/15)、「ワールドトラベル ミャンマーの基本情報」などを読んだ。これらのレポートは、ウェブサイトへのアクセス制限だけでなく、政府による電子メール検閲の存在を示唆している。だが、前記木村健一氏のコラム(2005/12/23)には「正確な数字はわかりませんが、インターネットやメールの普及も目を見張るものがあります。インターネットのニュースも各国のものが自由に閲覧できます。(シャン関係など反**で見れないものもあり)もし報道を全面的に規制しているのであれば、これらのメディアをすべて閉じなくてはならないでしょう」とある。確かに検閲にはそれなりの規模をともなう技術・設備・人材などが必要だし、本格的なチェックが行われているかは微妙だ。ともあれミャンマーのインターネット普及が遅れていることは事実で、ITU(国際電気通信連合)による統計(2004年)で普及率は182国中180位の0.12%となっている(→インターネット普及率リスト from ウィキペディア)。

※5:DVBの設立については、亡命政府大臣ボー・フラティン氏のインタビュー(from ビルマ情報ネットワーク 2001/04/17)で触れられている。
●それでは、ビルマ亡命政府であるビルマ国民連邦連合政府(NCGUB)についてお聞きします。NCGUBは経済的にどのように運営されていますか?

カナダ政府がNGOを通して、最初に経済的なサポートをしてくれました。その次がノルウェーで、1991年にアウンサンスーチー女史がノーベル平和賞を受賞した時、ノルウェー政府がノルウェー・ビルマ委員会を通して経済援助を準備してくれました。また、オスロの公共ラジオ放送で「Democratic Voice of Burma」(ビルマ民主の声)という番組が設けられ、1日2時間の放送時間が与えられました。その番組は1992年から現在に至るまでずっと放送が続いています。その後、デンマーク、スウェーデン、ドイツ、そしてアメリカと続き、NCGUBの活動を援助してくれる国が増えました。 (以下略)
このインタビューでは、ボー・フラティン氏と亡命政府が現状にいたる経緯、日本のビルマ支援政策の問題点なども語られていて興味深い。

※6:前出のDVBディレクターNaing氏によれば「ミャンマー国内には衛星テレビ受信環境が普及しているため、約1000万人が視聴対象となるだろう」とのこと(→※7)。ミャンマーからの日本語ブログには、「受信機、アンテナ合わせて200ドル以下の出費で近隣諸国の数100のチャンネルを見ることができます。電話は無くても、衛星放送は有る! という家庭も多いです」と書かれている(→「衛星放送」 from PING LONG ミャンマー現地生情報 2005/08/07)。また前出の木村氏によるコラムには「今現在は窓を開けると、目が悪い私でもご近所だけで300本以上の衛星テレビ用のアンテナが目に入ってきます。つまり外国のニュース、BBCやCNN、NHKニュースをダイレクトに見ている市民が万単位でいる訳です」とある(つまり“ミャンマーでは軍部の情報統制によって真実が全く報道されていない”と思われているがそれは誤解だ、と木村氏は書いている)。

※7:前出Media Network WeblogのエントリからリンクされているInter Press Service News Agencyの記事“Burmese TV Beats the Censors”(02/22)が、DVBによる衛星テレビ放送開始を紹介している。



[参考サイト]

from ウィキペディア
 ミャンマー、 ビルマ連邦国民連合政府

 ProMED情報(詳細)→ミャンマーの鳥インフルエンザ情報(厚生労働省検疫所 海外感染症情報)。情報源にDVBが。

 政府のホームページがのっとられた!→というコラム from ビルマ情報ネットワーク 2000/08

 言葉に見るミャンマー(特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン「宮原 光の駐在員ブログ」)


posted by 犬TV at 23:43 | Comment(1) | TrackBack(0) | 放送 - アジア
この記事へのコメント
MRTV-3のライブ音声(WMP)を聞くことができた。音質はあまりよくなかった。内容はポップミュージック。
Posted by inuTV at 2006年03月10日 20:19
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