2006年03月11日

北朝鮮市民の1%が外国の放送を聞いている!?

特定失踪者問題調査会による「しおかぜ」は、北朝鮮に拉致されていると思われる被害者に向けて呼びかけるという特殊な放送だ。
主な内容は、失踪者から家族への手紙と失踪者公開リストの朗読からなる。手紙を通して聞く家族の思いは切なく、リストから失踪状況をあわせて読むと、拉致された際の被害者の恐怖が想像される。

北朝鮮では、一般の市民でも自由にラジオを聞けないことが知られており、受信機の周波数が固定されているといわれる。さらに、北朝鮮政府が存在を認めない拉致被害者は、行動を厳しく監視・制限されているはずだ。そんな状況の中で「しおかぜ」が拉致被害者の耳に届く可能性は、残念ながらとても低いといわざるをえないだろう。

「月刊短波」2006年3月号に「北朝鮮の短波人口」という記事があった。
Open Radio for North Koreaの発表によると、 319名の脱北者に北朝鮮での外国国ラジオ放送聴取の調査を行ったところ、 304名から有効回答を得た。それによると4.27%に当たる13名が北朝鮮に居た時に短波で外国の放送を受信しており、 11.2%に当たる34名が中波で受信していた。脱北者は外国の放送を聴く率が多いだろうという事を考慮しても、 北朝鮮の人民の1%は外国の放送を聴いていると推測され、その数は20万人にのぼる。 中国、ロシア等近隣の送信所から強力な電波が出ている事と、中国製の短波ラジオが多数持ち込まれていることもこれを後押ししている。 同局では咸鏡道の3都市で同局を受信しているリスナーが居る事を確認している
この記事のネタ元“DX Listening Digest 6028”は、「開かれた北韓放送(ORNK = Open Radio for North)」のエグゼクティブ・ディレクター河泰慶氏が書いた英文記事(The Daily NK 2006/02/05)を全文引用している。

海外からの放送を聞くことは違法であり、見つかったら処刑されかねない命をかけた行為のはずだ。推測の数字とはいえ、100人に1人にあたる約20万人がラジオを聞いていたとしたら、これはかなり多い割合といえるだろう。中国からの短波ラジオの流入が指摘されているが、かつてアメリカが北朝鮮に短波ラジオを大量に送り込もうと計画しているという報道もあり、この動きも無関係ではないだろう。

拉致被害者に向けて、助け出せないことを謝罪し身辺の安全を注意する「しおかぜ」の放送が、まずは人づてにも彼らに届き、少しでも早い帰国につながるよう祈らずにはいられない。

[関連情報]

北朝鮮メディアガイド(私設朝鮮民主主義人民共和国研究室 2003/3)
北朝鮮向け短波放送事情(北朝鮮難民救援基金NEWS No.46 2006/01)

「しおかぜ」プロジェクト拡大へ!(アジア放送研究会 2005/12)

 初の韓国民間人、短波放送局 “隣人”の声で、北に「自由」を(産経新聞 2005/12/29 via Yahoo!ニュース)
 「金正日総書記に送るメッセージ」をラジオで(中央日報 2005/12/29)

「月刊短波」
 2005年12月号:「しおかぜ」の放送時間延長、「開かれた北韓放送」が放送開始など
 2006年1月号:開かれた北韓放送がHP開設、北朝鮮RFAを「トロイの木馬」と非難など
 2003年4月号:北朝鮮にラジオ散布作戦
「開かれた北韓放送」の北朝鮮での聴取者
 河泰慶(開かれた北韓放送 エグゼクティブ・ディレクター)[ 2006-02-05 15:20 ]

「開かれた北韓放送(ORNK = Open Radio for North Korea)」が立ち上げられてから約2ヶ月。「北朝鮮で放送を聞いている人がいるのだろうか?」。これは、私がORNKを始めてからしばしば聞かれた質問のひとつだ。実際にこれはORNKの設立準備中だった私にとっても、もっとも重要な疑問だった。聴取者のいない放送は役に立たないものだ。

北朝鮮社会では外部からの情報が厳しく規制されているため、海外のラジオ放送の聴取者数について公式な統計を得ることができない。これを得る唯一の方法は、海外のラジオ放送を聞いていたと主張する脱北者の数をもとに見積もることだ。幸い、北朝鮮向けに放送している3つの放送局(RFA、VOA、KBSの社会教育放送)によって行われた調査が、脱北者における聴取者の割合を示している。

この調査は、海外ラジオ放送を聞いている人々がいることを立証している。しかし、調査が放送局自身によって行われたため、私はその結果を完全に引き合いに出すことができない。社会的効果を考慮し、数値が過大評価であろうと考えるのが、妥当だろう。

しかし、より信頼できる調査が最近発表された。Korean Press Foundationが、ここ2年内に韓国へと脱北した319人の調査を行ったのだ。304人が有効回答を提出した。それら304人の回答者のうち、4.27%の13人が海外ラジオ放送を短波で聞いたことがあり、11.2%にあたる34人が中波で海外ラジオを聞いていた。これはまさに、かなり高い割合だ。

脱北者が他の北朝鮮市民より頻繁にラジオを聞いているだろうという可能性を考慮しても、北朝鮮の人口の1%が海外の番組を聞いていると推測できるだろう。総人口2,000万人のうち、20万人の聴取者がいることになる。我々はこれを少数とはいえない。

それでは、北朝鮮の人々はどのようにラジオを手に入れるのだろうか。

最近北朝鮮で売っているラジオは、中国製のものだ。広大な国土をもつ国々では一般に短波が使われるため、多くの中国製ラジオは短波受信機能を備えている。対照的に、狭い国土の韓国のような国では、短波を使う必要がない。FMかAMで十分だ。その結果、短波ラジオを韓国でみつけるのは難しい。

ロシアや中国、合衆国のような大きい国は、長い距離を超えて電波を送るために短波を使う。そのため、市場で簡単に短波ラジオをみつけられる。中国の短波ラジオが、現在北朝鮮に押し寄せているのだ。

北朝鮮市民は短波のORNKを聞くことができるのだろうか? この放送局はまだ始まって2ヶ月しか経っていない。誰かが聞いているのだろうか?

幸い私はORNKの聴取者がいたことを確認した。咸鏡道(Ham-kyoung)地方の3つの都市にいた人々が放送を聞き、放送の質が内容を理解するのに十分だったと知らされた。彼らの安全のために、私はこの情報源を示すことができないが、読者は理解してくれると信じている。

聴取者は、放送する者をより精力的にしてくれる。これにより、創設から2ヶ月で聴取者を得たことはたいへん励まし興奮させる。

ORNK職員はこのニュースにとても励まされ、よりよい番組を制作するための努力に活力を与えるだろうと信じている。


《原文》
http://www.dailynk.com/english/read.php?cataId=nk01100&num=548

North Korean Audience for Open Radio for North Korea
By Young Howard, Executive Director of Open Radio for North Korea
[ 2006-02-05 15:20 ]
It’s been about two months since Open Radio for North Korea (ORNK) was launched. “Is there anyone who listens to the broadcasts in North Korea?” This is one of the questions I have frequently been asked since I started ORNK. Actually, this was also the most important question to me while preparing to establish ORNK, as there would be no use to broadcasting without an audience.

Because information from outside is strictly banned in North Korean society, official statistics on the size of the audience that listens to foreign radio broadcasts are not available. The only way to get this information is to estimate based on the number of North Korean refugees who claim to have heard foreign radio broadcastings. Fortunately, a survey conducted by three broadcast companies who broadcast in North Korea- Radio Free Asia, Voice of America and the Social Education Broadcasting of KBS- shows the ratio of listeners among North Korean refugees.

This survey verifies that there are people who listen to foreign radio broadcasts. However, I can’t entirely quote the results, since the survey was conducted by the broadcast companies themselves. It is theoretically reasonable to think that they might overestimate the numbers out of public relations considerations.

However, a more reliable survey was recently released. The Korean Press Foundation conducted a survey of 319 North Korean refugees who made it to South Korea within the last two years. 304 respondents provided valid responses. Among these 304 respondents, 13 people, 4.27%, have listened to foreign short wave radio broadcasts and 34 people, 11.2%, have listened to the foreign medium wave radio. This is quite a significant proportion.

Considering the possibility that North Korean refugees had listened to the radio more often than other North Korean citizens, let’s assume that one percent of the North Korean population listens to foreign programs. Out of a total population of 20 million, it means that there are 200,000 listeners. We can’t say this is a small number.

Then how do North Koreans get radios?

The radios recently sold in North Korea are made in China. Most Chinese radios have a function to receive a short wave, since countries with a huge territory usually use short wave. By contrast, a country like South Korea with a small territory does not need to use short wave. FM or AM is enough. As a result, short wave radios are hard to find in South Korea.

Big countries such as Russia, China, and the US use short wave to send signals over long distances. Therefore, it is easy to find short wave radios in those markets. Short wave radios in China are currently flooding into North Korea.

Can North Korean citizens listen to shortwave ORNK? The broadcast is only two months old. Is anybody listening to it?

Fortunately, I confirmed that there were listeners of ORNK. I was informed that people in three cities in Ham-kyoung province were listening to the broadcasts and the quality was good enough for them to understand its contents. I can’t reveal my source of this information for their safety, I believe readers will understand.

Listeners make broadcasters become more energetic. In this regard, it is very encouraging and exciting that ORNK already has an audience within two month of its founding.

I believe workers at ORNK will be greatly encouraged by this news and that it will invigorate their efforts to produce better programs.


posted by 犬TV at 23:36 | Comment(1) | TrackBack(0) | 放送 - アジア
この記事へのコメント
北韓住民5人 東海から船で韓国に亡命
from KBS WORLD 2006/03/20
http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_detail.htm?No=21678

"37歳の男性は、軍隊で韓国のラジオ放送を聴いたのがきっかけで韓国に関心を持つようになり、今年1月に韓国への亡命を決心したと話しているということです。"
Posted by inuTV at 2006年03月20日 22:24
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