2006年05月12日

複数の視点 「撮られっぱなし天国」と台湾アイドルとチボ・マット

2004年10月にNYのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたコンサートを収録したビースティ・ボーイズ“AWESOME; I FUCKIN’SHOT THAT!”

awesome.jpg予告編:
Oscilloscope Laboratories

コンサートの模様を収めたカメラは61台。そのうち55台は会場のファンに配られ、観客の視点で撮影された。撮影に関して素人の彼らは事前に「やりたいことをやれ、ロックしろ、映画制作者になりきれ、舞台裏に忍び込んでみろ、ただし、テープは回し続けるんだ」という簡単な指示だけを与えられたという。ビースティーズのメンバーでこの作品を監督したMCAことアダム・ヤウクによれば「平均で1分あたり75のカットが入っている」そうだ。

会場のファンたちと撮影・共作したコンサート映画(HOTWIRED 2006/01/23)

ビースティーズはベテランだしオーソリティだしコンサートの規模はでかいし“Awesome〜”には120万ドルという制作費がかけられている。だがMCA監督はこの映画の目標を「初期のパンクやヒップホップのムーブメントに見られた『手作り』の精神をつかむこと」としている。大量の素人ビデオが次々とカットアップされる映像を、従来の一般的なコンサートフィルムと比べて質が低いということもできるだろう。「標準化された」ライブ映像からは伝わらないグルーブを“Awesome〜”は生み出すことができたのか、観るのが楽しみだ。

“Awesome〜”のスタイルが、どのように認知されるかはともかく、ビデオが身近な存在になりネットを通じて共有される近頃の感覚とリンクしているのは間違いない。この作品を自ら“authorized bootleg(公認の海賊版)”と呼んでいるのも、メジャーアーティストとしてはオープンソース寄りのスタンスを保ち続けてきたビースティーズらしい。彼らは、まだYahoo!のアドレスがakebono.stanford.edu/yahooだった頃からオフィシャルサイトを立ち上げていた。最近では、WIRED誌によるクリエイティブ・コモンズのライセンスつきCDに楽曲を提供したり、マッシュアップ用に公式サイトでボーカルトラックのデータを公開したり。アートフォームとしてのオールドスクール・ヒップホップを愛し続け、実践し続けてる感じが素敵じゃないですか。

“AWESOME〜”は今年1月サンダンス映画祭での初上映を経て3月末からアメリカで劇場公開されていた。さらにアメリカでは7/25にDVDリリース。東京でも7/29から劇場公開される。邦題は「撮られっぱなし天国」。なんだよそのタイトル。

関連:
ビースティーのあの映画、DVDリリース(tonotype 2006/05/10)
Beastie Film(C O U L D 2006/01/11)
映画 『 Awesome: I Fuckin' Shot That 』(Listen Up 2006/03/19)
BEASTIE BOYS(BARKS)


カメラ61台というのはさすがに超絶だが、“複数の視点”という意味では思い出す1本のPVがある。

それは、SOS……といっても、ヒップホップでもたまにサンプリングされるThe SOS Bandではなく、90年代後半から活躍した台湾の2人姉妹アイドルSisters of Shiu(徐氏姐妹)のビデオ。たぶん97年に出した「貝殻」という曲のビデオクリップだと思う。

ビデオは、玩具なんかが大量にバラ撒かれたまさに「玩具箱をひっくり返したような」状態のスタジオで撮影されていた。その中を自由に動き回るお姉ちゃんと妹を1台ずつのカメラが追いかける。それぞれの映像が分割された画面で同時進行しているという内容。2人がすれ違ったりするのが面白く、たぶん1度しか見ていないんだけど、強烈に印象に残っている。あのビデオを見たことによって、僕の中で空間と時間の感覚に関する何かのスイッチが入ってしまったことは間違いない。

「貝殻」のリリースは97年だが、その後このビデオのコンセプトをさらにぶっ飛んだ方向に進めたようなPVを見て驚いた、というより頭痛がした。それはMICHEL GONDRYが撮ったCibo Mattoの“Sugar Water”。調べたら96年の作品だったけど(10年前かよ)、僕が見たのはもっと後だった。もしかしたら「貝殻」は“Sugar Water”を上辺だけパクったのかも。

“Sugar Water”のビデオも画面が2分割されていて、2人の動きを別々に追っている。だが、片方は逆再生なのだ。で、ビデオが進んで2人が出会うと今度は今まで正方向に再生されていた方が逆再生になり、逆再生だった方が正方向に……最初見たときはマジで悩んだ。ネコとか。カメラの数ではビースティーズにかなわないし、逆再生を利用したPVも沢山ある(思いつくところではファーサイド、尾崎豊。っつーかチャップリンがやってたよね。それをドリフ大爆笑がパクッてた)けど、“Sugar Water”の時間と空間の歪め方は秀逸だと思う。

関連:
CIBO MATTO / SUGAR WATER(MUSIC-VIDEODROME 2003/10/02)

※“Sugar Water”のビデオはYouTubeにあったので見てみてください。「貝殻」のビデオは見つけらんなくて悔しい。なおSOS(姉)は台湾でドラマ化された「花より男子」に出て最近ちょっと話題になった

posted by 犬TV at 07:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 観る
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